前回、「幼年者心得之廉書」の”その一”のみ書かせて頂きましたところ、一部の方からの全文を載せて欲しいというご要望にお応えしまして(^^;)、転載させて頂きたいと思います。なお、出典は「よみがえる日新館童子訓」(會津藩校日新館発行)です。原文の文語体の各条の後に、青字で口語訳を書かせて頂きます。
其の一
毎朝早く起き手洗い、口すすぎ櫛り衣を正しうして父母の機嫌を伺い、年齢に応じ座中を掃除し客の設け等致すべし。その一
毎朝早く起きて顔や手を洗い、歯を磨き、髪の毛を整え、衣服を正しく着て、父母に朝の挨拶をしなさい。年齢に応じて部屋の掃除をし、いつでもお客様を迎えられるようにしなさい。其の二
父母および目上の者へ朝夕食事の給仕、茶煙草の通ひすべし。父母一同に食するならば、父母の箸を取らざる内は食すべからず。故ありて早く食すことあらば其の訳を告げて早く食すべし。 その二
父母や目上の人への食事の給仕、それにお茶や煙草の準備をしなさい。父母といっしょに食事をするときは、両親が箸を取らないうちは先に食べてはいけません。どうしても先に食べなければならないときは、理由を話し許しを得なければなりません。其の三
父母及び目上の者の出入りには、必ず送迎すべし。 その三
父母や目上のお客様が玄関を出入りする時は、送り迎えをしなさい。其の四
出る時は父母に見て暇を乞い、行先を告げ、帰る時も同じくその旨を告ぐるべし。凡て何事も父母に伺い己れ専らになすべからず。 その四
外出をする時は父母に行き先を告げ、帰宅したら「只今戻りました」と挨拶しなさい。すべて何事も父母に伺いをたて、自分勝手なことをしてはいけません。其の五
父母及び目上の人の前にて立ちながら物言い、立ちながら物聞くことをせざるべし。寒けれども手を懐にせず、暑けれども扇使わず、肌脱がず、衣の裾をかかげず。其の外不綺麗の物父母の見るところに置くべからず。 その五
父母や目上の人と話しをする時は、立ったままではいけません。また、いくら寒いからといって手を懐に入れたり、暑いからといって扇を使ったり、衣服を脱いだり、裾をたくし上げたりしてはいけません。父母の目につくところに、汚れた物を置くこともいけません。其の六
父母及び目上の人事を命じ給わば、謹みて承り、其の事を整い怠るべからず。己れ呼び給わば速やかに答えて走り行くべし。仮初にも其の命に違わず、不敬の応声すべからず。 その六
父母や目上の人から用事を頼まれた時は、謹んで用件を聞き、怠りなく行動しなさい。呼ばれたときは速やかに返事をし、どんなことがあっても言いつけに背いたり、不真面目な返事をしてはいけません。其の七
父母衣服を重ねる様命じ給わば、寒く覚えずとも命に従うべし。新に衣服を賜わば嗜まざるものにても慎て戴くべし。 その七
父母が寒さを心配して衣服の重ね着をすすめたら、さほどではないと思っても従いなさい。また、新しい衣服を用意して下さった時は、謹んで頂きなさい。其の八
父母の常に居給う畳に仮初にも居るべからず。道の真中は尊者の通る所故、片寄り通るべし。門の閾を踏まず、中央を通るべからず。君門は尚更のことなり。 その八
父母の居場所となっている畳の上には、どんな理由があろうと上がってはいけません。また、道の真ん中は偉い人が通るところですから、子供は道の端を歩きなさい。門の敷居は踏んではならず、中央を通ってもいけません。ましてや藩主や家老など偉い人が通る門であればなおさらです。其の九
先生または父兄と役義を同じうする程の尊者に道に逢う時は、路の傍に控えて礼をなすべし。行先など問うべからず。共に行くとも後れ行くべし。 その九
先生や父母と付き合いのある人と出会った時は、道の端に控えて礼をしなさい。決して軽々しく行き先などを尋ねてはいけません。もし、いっしょに歩かなければならない時は、後ろに控えながら行きなさい。其の十
人を誹り、人を笑い、或は戯に高きに登り深きに臨み、危うきことなすべからず。 その十
人の悪口を言ったり、人を笑ったりしてはいけません。また、ふざけて高いところに登ったり、川や水の深いところで危険な遊びをしてはいけません。其の十一
凡て学習のこと先ず貌を正しくし己を謙り敬て其業を受くべし。 その十一
すべて、学ぶことから始めなさい。学習に際しては姿勢を正し、素直な気持ちで先生を心から尊敬して教わりなさい。其の十二
容貌は徳の則なりといえば、士庶人きっと分れ見ゆる様に威儀をたしなみ、不敬不遜の容体無之様にすべし。尤も何程懇意に交わるとも言葉を崩さず、目下の者の挨拶奴僕と等しからざる様にすべし。言語も他邦に通ぜざる野鄙の言葉は常に気をつけ直すべし。 その十二
服装や姿かたちは、その人となりをあらわします。武士は武士らしく、衣服を正しく整えなさい。どのように親しい間柄であっても、言葉づかいを崩してはいけません。目下の者や品のない人間と、同じように見えることをしてはなりません。また、他藩の人に通じない下品な言葉を使ってはいけません。其の十三
父母ある時は送物の類、私にすべからず。人より送り物ある時は拝してこれを受け、父母悦んことを言うべし。凡てこれに準じ家長を称すべし。 その十三
頂き物があったときは、自分一人のものにしてはいけません。どんな場合も丁重に受け取ったあと、父母に喜んで頂けるようきちんと説明することが肝心です。其の十四
父母の助けになることは聊か労を厭わず、まめやかに勤め行うべし。 その十四
父母の手伝いをするときは、力の出し惜しみをしてはいけません。まめに働きなさい。其の十五
尊者我が方に来るか或は他へ行きたる時、我に上立つ人来らば其座を立て迎い帰りにも又送るべし。客を得ては奴僕は勿論犬猫の類に至るまで叱ることすべからず。尊者の前にて嚏欠伸すべからず。すべて退屈の体すべからず。 その十五
目上の人がみえられたときは、席を立って迎え、そして見送りなさい。お客様の前では、身分の低い者や犬、猫にいたるまで決して叱り飛ばしてはいけません。また目上の人の前で、しゃっくりやげっぷ、くしゃみやあくびもいけません。失礼な態度に見えるような仕草はいけません。其の十六
長者何事にても問うことあらば、先ず一座の人を願望して答うべし。己れ先立って率爾に答うべからず。 その十六
目上の人から何か尋ねられたときは、その場の人たちを見まわし適任者がいるようならその人に任せなさい。決して知ったかぶりをして先に答えてはいけません。其の十七
酒宴遊興を楽とすべからず。年若の時別して慎むべきは色欲なり。一生を誤り、名を汚すものなれば幼年の時より男女の別を弁い、色欲の咄すべからず。或は戯言を以て人の笑を催し軽浮の貌すべからず。争いは我儘より発するものなれば、常に慎むべし。その十七
仕事もしないで、酒を飲んでさわぎ遊郭に行くのを楽しみにするような人生はいけません。若い男性は、異性への欲求が強くなりがちですが、これが癖になったりすれば人生を誤り、不名誉な生涯になりかねません。幼いころから男女の区別をしっかりし、女性と遊ぶ話を好んでするようなことは禁物です。下品な言葉で周囲を笑わせたり、軽はずみな行いをしてはいけません。また、喧嘩は我慢できないから起こるものなので、何事にも我慢強くし喧嘩などしないよう心がけることが大切です。会津藩の藩校「日新館」が創設されたのは、1,803年(享和3年)だったそうですが、さらに遡って1,600年代の中頃、町民たちが立てた「稽古堂」が、日新館の前身だったという歴史が残っているそうです。興味のある方は
、<會津藩校日新館>のサイトをご参照ください。
とにかく、400年以上も長く創設の精神が受け継がれ、今の生活にもそのままあてはまる、これほど具体的な教えが残っていることは大変有り難いことです。また、すでにその精神が基礎となって私たちのDNAに組み込まれているような感じもいたします。
古き良き時代、古き良きものにも目を向け、新しい時代に取り入れていく姿勢を忘れないようにしたいものであります。
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